あの日、あの時の世界を切り取ること
その一瞬を切り取ること
ベランダの柵から雨の雫が ぽたり 落ちはじめる
椿の花が ぼとっ と頭ごと枝から離れる
波間に漂う サーファーの スクッ と板に乗る静と動
交差点で青を迎えた途端に 四方八方へ向かう人ひと
早朝の空港の これから旅ゆく興奮と
帰ってきた安堵と焦燥
終電の発車する瞬間の恋人の 唇が触れる
淹れたのに飲み忘れていたインスタントコーヒーが チン と 鳴る直前に湯気を立ち上げる
深夜のテレビジョンの ぷつり と現れる刹那的な闇
待ち焦がれた電話の鳴る前の わずかな震え
その瞬きをするかしないかの世界に、
過去へも未来へも永続的に続いていく時間と、
扉が閉じられるかのように、
ぱたり と終わる時間と。
まるでそこに匂いがあるように、
まるでその場にいるように、
皮膚にまで沁みるような。
短歌の本をいただきました。
「回転ドアは順番に」 穂村弘×東直子
搾りたてのjuicyなオレンジジュースのような、
何年もオーク樽で寝かされた芳醇なウイスキーのような
口にしたら、最後
そこに広がる世界に取り憑かれる。
短歌を読むことは、わたしにとって、そんな世界。
文字通り「読む」だけだが。
写真を撮ることやみること、
こうして書くことや、
Points of You®のカードを使っていることも
同じことかもしれない。
凝縮された濃密な世界。
わたしの自由に遊べる時間。
現実と空想と記憶とが綯い交ぜになって、
欲望がくっきり色を帯びてくる、
わたしの時間。
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