久しぶりにDVDを引っ張り出してきて、観た。
『Pay It Forward』
Points of You®︎の誕生のきっかけになった映画
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11才の少年トレバーは、社会科の授業で「今日から世界を変えてみよう」という課題を出されます。
トレバーが考え付いたアイデアは、人から受けた厚意をその相手に対して恩返し=“ペイ・バック”するのではなく、 他の誰かに違う形で先贈りして善意を広げていく=“ペイ・フォワード”映画の中では「次へ渡せ」という言葉で翻訳されています。
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この一見すると、脳内お花畑のような、人間讃歌になりそうな話を、監督のミミ・レダーは、『この映画を単なるセンチメンタルなものにしたくなかった。地に足のついたものにしたかった』と話す。
舞台は富と財力の象徴ラスベガスのホテル群のそばの、あまり治安のよくない生活圏。
況やトレバーの計画は順調に進むわけでもなく。
麻薬中毒のホームレスは、トレバーからもらったお金で服を買い就職先を手にしたのにもかかわらず、また麻薬にふけったりするし。
そもそも課題を出した社会科の先生は、生徒に「今日から世界を変えてみよう」「君ならどうする?」と言っておきながら、自分自身の生活パターンを変えずに、過去のトラウマから人を愛することにも臆病だ。
トレバーは、ちっとも世界が変わらないことに
自分の計画は失敗だったのだと落胆する。
それでも
トレバーは、ただ自分の出来ることを
目の前にいる人に本当に必要なことをし続ける。
その結末やいかに。
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結果の見えにくいものを続けること
映画を観て久しぶりに思い出したことがある。
もうずいぶん前にイタリアのナポリを旅したとき、
美味しいエスプレッソが飲みたいと思ってあるカフェに入った。
どうやら人気店のようでわたしのような観光客や地元の人で賑わう店内のカウンターで並んでいたときのこと。
いよいよわたしの順番が回ってきてオーダーをして代金を払おうとすると、
レジのお姉さんが不思議なことを言う。
『あなたのカフェはさっきの人が払ったわよ』
さっきの人???誰???どゆこと???
わたしの聞き間違い???
と、顔中に?を浮かべているわたしに、お姉さんが説明してくれた。
イタリアのナポリでは、カフェに入ったとき「il caffè sospeso」とコーヒーをオーダーする。
1杯は自分用に、もう1杯は誰かのために、2杯分の料金を支払うカフェ・ソスペーゾという伝統的な習慣がある。
自分以外の誰かのためのその1杯分のコーヒー代。
ナポリはもともとあまり裕福な街ではなく、貧しい人も多く暮らしている。
下町の路地裏なんかは確かにそんな雰囲気だ。
コーヒーが飲みたいけれど手持ちのお金がない人がカフェに来たときに
「保留コーヒーはありますか?」と聞いて、
もしあればコーヒーを無料で飲むことができる、という仕組みらしい。
今ではナポリでは少なくなった習慣と聞くが、お姉さんはわたしにそんなナポリの文化を伝えてくれたのだと思う。(わたしがみすぼらしかったのだろうか??)
その習慣は「保留コーヒー(Suspended coffee)」と呼ばれ、スターバックスやマクドナルドなどの有名店も巻き込んで世界中で広がりをみせているようだ。
「il caffè sospeso」には、『この美味しいものをみんなで楽しみたい!!』みたいな、小さなしあわせをおすそ分けする、みたいな気持ちを感じて、なんだか幸せな気持ちになった。
見知らぬ誰かの小さな幸せのために。
たとえそれが誰か分からなくても。
人には認められたいという欲求がある。
『情けは人の為ならず』と人にかけた情けは、周り回って自分に返ってくるとは言うものの、恩を返した相手が目の前にいれば、即反応が返ってくる。
人のためにとしていることで、満たされているのは自分自身なのだ。
目に見えないとそれは得られないのだろうか。
いや、そもそも、見返りなど必要なのだろうか。
誰かに気持ちを届けたとき、
そんな機会があることがすでに幸せなことなのではないだろうか。
カフェのカウンターで、
わたしはカフェ代は払えるのだけれど、どうしたらいいのかしらん?と何となしに呟いたら、
お姉さんは、じゃああなたも誰かのためのコーヒーを買ったらいいのよ。
と、ウィンクしながら淹れたてのエスプレッソを差し出してくれた。
旅先ではいつも、この誰かを幸せにする気持ちに出会っているなあと思う。
わたしも、できることをひとつずつ
し続けていこう。
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