「雨の日には車を磨いて」
五木寛之著
1988年に初版が出版された、
9台の車と9人の女性を巡る9つの短編小説。
父の本棚に並ぶ五木寛之のほかの本には、
ちっとも食指が動かないのだけれど。
たぶん20代の頭の頃に、自分で購入した。
「雨」と「車」
しとしとした雨は好ましいもののひとつで。
車は詳しくはないけれど(そして今は所有すらしていないけれど)、
各車の個性があった古い車が好きだ(いまの車は見分けがつかない…)。
その頃に出会った格好良い大人たち。
神戸のご夫婦で、ご主人はメルツェデスのSL、マダムはジャグヮーのコンバーチブルに乗っていて。
おんなじ日おんなじ場所にも
それぞれで車を運転してやってくる。
神戸の街をご夫妻で案内してくれる時も、
わたしはどちらかの車に乗り、
2台で移動する。
その、
一見無駄に思えることを愉しむ粋さと、
好きなものへのまっすぐなこだわりに、
こんな格好いい大人になりたいなと思ったことを覚えている。
なんだか冴えない主人公の「ぼく」が
出会う女性と車がまた洒落ていて。
第1話のヒロイン瑤子は「雨の日だからこそ新しい靴をはくのよ」と「ぼく」に言い、
「車は雨の日にこそみがくものだわ」と続ける。
わたしの思う、格好いいわがままが似合う女、
森瑤子さんと同じ名前というところも、
とても気に入っている。
時おり、自己嫌悪に落ちそうになると、
本棚から引っ張り出してきては
かっこいい大人に背すじを
叩いてもらうのである。
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