本の世界は危険で、この世界をわたしは愛している


乗り物に乗って、本を読んでいると
永遠に目的地に着かなければいいのに。
と思う。

電車でもバスでも飛行機でも船でも。
本を開くとそんな気になるので、
ほんとうに危険だ。

気がつけば、
終点の駅で誰もいなくなった車内に取り残されていたり、
滑走路に降りるどすん、という衝撃に驚いたり、
到着を知らせる汽笛に慌てて荷物を片付けるはめになる。

なので、降りてからの時間が決まっているとき、
通勤電車とか、待ち合わせとか、歯医者の予約とか、は、

本を読まないようにしている。


(とは言え、電子書籍だとこうはならない。
きっちりと、向こうの世界とこちらの世界は分けられていて、

いつだって“現実”が手の中にある。)


単行本より、文庫本の方が、より顕著に危険だ。

本の重さを感じないので、ずいずいずいっと、連れ去られてしまう。


とりわけ、“連れ去られる”のは、
江國香織さんの本で。

あっという間に読めてしまうけれど、
どこから読みはじめても、それもまた別の世界が広がって、繰り返し繰り返し読む。

旅のあいだ中、読むものだから
旅が終わるころには、
すっかりぼろぼろになった文庫本が鞄の中にある。

にしても、週末の昼下がりのすいた電車の
なんとも気の抜けた空気よ。

このお互い好きなようにしよう感を共有してるような感じがなんとも好ましく、
本の中と外をいったりきたりするのにぴったりで、
案の定、降りる予定の駅をとおに通り過ぎている。

降りる駅を教えてくれるお知らせアプリやら、
どうやったら降り忘れないようにするか考えるなんて、

“降り忘れること”にちっとも困っていないわたしには、はなはだ不粋だ。


日々の音

大人のための絵のない絵本。 日常と非日常のはざまにあるふとした瞬間を音にする。 心を奏でていくと、世界はこんなにも美しくやさしい。 大人のあなたへ、ココロにまばたきをお届けします。

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