その世界を切り取る

記憶の仕方は人それぞれだと思うけれど、
どうやらわたしの場合は、動画のコマ送りのように覚えているらしい。



且つ、そこに流れていた音や匂いや肌感のようなものもあるので、情報量が多すぎて困ることがある。

過去を思い出す時も、
切り取った記憶がそれぞれ引き出しに入っていて、
いろんな箪笥を開けるような感じがする。
遡るのではなくて、いま目の前に立ち昇るような感じ。
なので時系列が一瞬バラバラになっていたりする。


絵画や写真の展示会なども好んで出かけて行くのだけれど、その切り取られた中に、音や温度や風や匂いや色や、そんなことを感じながら見るので、音声ガイドはつけられないし(情報量が消化できない)、時間もかかる。


欲張りなのだ、きっと。
いや、欲張りです。
その一瞬の空間を切り取ること、に。



その瞬きをするかしないかの世界に、
 
過去へも未来へも永続的に続いていく時間と、
扉が閉じられるかのように、
ぱたりと音を立てて終わる時間と。
 
まるでそこに匂いがあるように、まるでその場にいるように、皮膚にまで沁みるような。
 
凝縮された濃密な世界。
 
現実と空想と綯い交ぜになって、わたしの欲望がくっきり色を帯びてくる時間。
 
これからも、こうしてこうやって、
わたしは世界を切り取っていくのだろう。

 

日々の音

大人のための絵のない絵本。 日常と非日常のはざまにあるふとした瞬間を音にする。 心を奏でていくと、世界はこんなにも美しくやさしい。 大人のあなたへ、ココロにまばたきをお届けします。

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