遊園地の乗り物の中でも、
とりわけ回転木馬がすきだ。
乗り物としても、
眺めているだけでも。
そして、古いほうがよい。
新しくきらきら ピカピカしていない、
海のそばの遊園地から持ってきたような、
移動サーカスの、
子供騙しのようなのが、よい。
ギコギコとゆったり 時がそこだけ止まったような。
ところが母は、そんなまったりしたのは嫌い、
ティーカップに乗せようとする。
そして、乗せられたら最後、
時間が来るまで、ハンドルをぐるぐる回すのだ。
周りの景色がぜんぶ四方へ吹き飛んでいく。
必死にカップにしがみついて、
投げ出されないようにする。
まわりのカップの人たちは
優雅な時間をたのしんでいるだろうに…
母はそんなことおかまいなしだ。
ティーカップを降りたあと、
ぐったりしたわたしと妹を見て、
けらけらところころと笑っている。
どちらが子どもか分からないくらい楽しげに。
なので、
わたしは回転木馬を目にすると、
ティーカップを楽しげにぐるぐる回して
ころころ笑う母を思い出すのだ。
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